今回は、アプリで会った一番お金持ちの人についての話。
その人とは、とあるマッチングアプリで知り合った。
指定された焼肉屋に行くと、待ち合わせの18時丁度についた私より先に相手はすでに来ていた。
第一印象はとても真面目そうな男性だった。悪く言うと少し暗そうで、スーツを着ていて眼鏡をかけていて細身で黒髪で前髪が長かった。
初めて会う人にいつもそうしている様に笑顔を作って「はじめまして」と言ったら、相手は大人しそうで奥手そうな外見とは裏腹に「写真よりお綺麗な人が来ましたね」と言ってくれた。この手の外見への賛辞は大体が下心からくるお世辞の場合がほとんどなのだが、この男性Aさんに限り、本当に思って言ってくれてるのが分かった。私を見ている眼鏡の奥の瞳が輝き、前のめりになり初対面から真剣に言ってくれていることが伝わった。
私は普段友人とは決して行けない高そうな焼肉を食べながらAさんと2時間ほど話をした。
Aさんはどうやら真剣に相手を探している婚活ガチ勢だと話していて分かった。
アプリで沢山の女性と出会い、誰ともしっくりこなくて付き合うまでいけないらしい。
Aさんが求めている女性像を聞いてみると「可愛いとか綺麗かよりも好みかどうかが何より大切なんです。でも自分が惹かれる女性はみんな合コンじゃ人気だったり、彼氏がいて無理で。アプリをしてみても写真と違う人が来るので。今日は本当に、良かったです」と私を見て言った。
みんな好みの人と付き合いたいと言う気持ちはある。それは分かるが、こうも堂々と初対面の私に公言するのはなんだかズレていると言うか。これが、いかにも遊び人といったルックスの人だったら「はいはいそうですか」と流して今日の出会いもすぐ解散にした。けれど彼は名刺もくれて、真剣な顔をして、慣れていないような態度をしていた。「遊びとかはありえないですね。距離を詰めるスピードが早すぎる人は警戒してしまいます」と言ってきた。
その日は解散してすぐに2回目も会う事になった。
2回しか会っていない私に指定してきたお店はなんとフレンチのコース料理だった。
しかも、「今日はプレゼントがあるんです。」と言い、渡してきたのは某高級ブランドのバッグだった。
流石に驚いて「受け取れませんよ」と言ったら、「安いので。重く捉えないでください」と言われた。
Aさんはお酒が強く、店員さんから退店を促されるまで、時間いっぱいたくさん話した。少しズレた発想をする人ではあるが、頭が良くて話していて楽しい人だった。
「遅くなってしまったのでタクシー代です。」そう言ってAさんは帰りにお金を渡してきた。私の最寄駅から近いお店を選んでくれているし、電車がまだ動いているので正直このお金はいらない。が、当然のように私にお金を押し付けるとAさんはタクシーに乗って帰って行った。
出会ってから毎日長文でやり取りするようになった。その後、数回食事に行き、その度にAさんは1人あたり数万円のお店を指定してくれて食事をして解散した。
手も触れず、告白もされないまま、食事だけ行く関係が続き、1ヶ月以上が経った。
だんだん私も食事に行くだけの関係に痺れを切らしてきた。今日こそどう思っているのか聞こうと思った。
指定された相変わらずの高級店に行くとAさんといつも通り話し「私のことどう思っているんですか?」と聞いてみた。
「あの、実はですね」とAさんは話し始めた。「いうさんのことタイプなんです。気に入っているんですよ。率直に言うと好きです。」
ここまでは私もうなずいた。ボランティアでも無いのに高い食事を奢ってくれてプレゼントをくれてラインを毎日するわけがない。そう思っていた。しかし、次の一言で唖然とした。
「ただ、結婚を前提に付き合うことは難しいかもしれません。」
「なんでですか?」
「言いにくいんですが、いうさんのことを親に相談したんです。そしたら親が難色を示しまして…。結婚相手として学歴が気になるみたいです。親からすると、僕と同等の学歴じゃないととの事です。でも外見や性格が好きなのでこうして会い続けてしまいました。」
Aさんは日本でトップクラスの大学を出ていた。無理だ。足りていないどころじゃない。
「好きなんですけどね…」と言われてもうまく頭に入ってこず、結局その後はどちらからともなく連絡が途絶え疎遠になってしまった。
結婚は家同士でするものだとも言われている。親に反対を食らい、Aさん自身も反抗する気がないのであればAさんとの結婚は諦めるしかない。結婚どころか付き合ってもいないけれど。
Aさんは、少し変わってはいるものの賢く穏やかないい人だった。
人に与え過ぎると利用される、そんなことも考えずただ良くしてくれる純粋な人だった。
きっと今頃Aさんと同じ学歴の優しい女性とAさんが結ばれている事を陰ながら祈っている。
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